アホウドリ研究の第一人者 長谷川博さんの引退

先日の読売新聞にアホウドリ研究の第一人者である東邦大学名誉教授 長谷川博さんが後身に道を譲るとの記事があった。

長谷川さんは40年以上にわたって毎年アホウドリの繁殖地である無人島の鳥島に赴き、ほぼ一人で1か月以上も保護活動を続けて来られた方である。その甲斐あってアホウドリは50羽ほどの絶滅寸前の状態から、5000羽まで戻ってきた。

長谷川さん自ら撮影したアホウドリの写真を見ると、美しく、雄大で、仲睦まじく人懐っこい鳥であることがわかり、魅力される。
ただ人を怖れない性質が彼らに悲惨な過去をもたらしたのだ。

鳥島は江戸時代から漂流者がたどり着く島だった。吉村昭『漂流』には、土佐の漁師長平らが暴風雨から漂流、黒潮に乗り鳥島にたどり着き、仲間を失いながら12年も過ごし、手製の船で青ヶ島経由八丈島に脱出したまでが描かれている。
漂流者が鳥島で生き延びることができたのは、アホウドリのおかげだった。アホウドリは人をみても逃げず、 たやすく捕まえることができ、食肉となった。
その後、明治期になり、アホウドリの羽が欧米で高く売れたことから、少なくとも500万羽以上が乱獲の対象となってしまい、戦後すぐに絶滅宣言が出されたほど。
そんなアホウドリをに愛を注ぎ、ここまで復活できたのは、長谷川さんの功績が大きい。

2年前に放送されたNHK BSプレミアム『漂流アドベンチャー』第一回が鳥島の話だった。案内役の池内博之鳥島に上陸すると、無人島にも関わらず向こうからヒゲ面の人が歩いてくる。それが長谷川だった。

長谷川さんが旧気象庁の職員向けに作られた火山噴火対応シェルターに寝起きされ、アホウドリのコロニー(巣営地)を整備し、アホウドリの子供と向き合い、手をバタバタさせながら奇妙な鳴き声を投げかけ、生態検査のため、胃にたまったエサを吐き出させている姿が印象的だった。

人間の愚行で大変ひどい目に合ったアホウドリたちも、長谷川さんには感謝していると思います。

お疲れ様でした。